思考力や表現力、判断力などの育成が重要視されている昨今ですが、日々の学習においては暗記することも欠かせません。
記憶力の高さを競い合う「メモリースポーツ」の元日本チャンピオンの青木健さんは、「記憶力は才能ではなく、努力と正しいメソッドでいくらでも伸ばせる」と語ります。
今回は、青木さん自身の経験を振り返りながら、中学受験やテスト対策にも役立つ暗記のコツをお聞きしました。
(あおき・たける)学習トレーナー・メモリースポーツトレーナー。
東京大学大学院総合文化研究科に在籍しながら、記憶術やメモリースポーツ、ルービックキューブなど脳のスポーツを教える「Brain Sports Academy(BSA)」を運営。
記憶力日本チャンピオン、世界記憶力グランドマスター。
著書に「記憶力日本チャンピオンの 超効率 すごい記憶術」、「東大式 頭の回転が100倍速くなるドリル」、「記憶力が100倍よくなるドリル」(以上、総合法令出版)「記憶王が伝授する 場所法 英単語」(三省堂)。「100%アピールちゃん!」(TBS系)内の企画[小倉優子 早稲田大学への道]チームドラゴン桜 特別講師。
記憶力は才能ではなく、
知識とスキル
――青木さんは記憶力を競い合う
「メモリースポーツ」という競技において、
日本チャンピオンに輝いた経歴をお持ちです。
昔から記憶力はよいほうでしたか?
いえ、むしろ暗記や記憶は苦手なほうでした。中学・高校と英単語や古文単語を覚えるのが苦手で、テストもいつもボロボロ。浪人して受かった大学も第一志望ではありません。
記憶術やメモリースポーツの存在を知ったのは、大学2年生の終わり頃です。たまたまテレビで「世界記憶力選手権」という番組が放映されていて、最初は「どうせ才能がある人たちの話だろう」と思いながら観ていました。でもどうやらそうではなく、僕と同じように記憶力にさほど自信がない人たちが「練習したらできるようになった」と語っていたんです。
それで興味を持って自分なりに調べたり、書籍を読んだりして、いろんな記憶術を身に着けていきました。そのうちに記憶が得意になり、大学4年生の時にはメモリースポーツの日本選手権で優勝しました。
そのほか、メモリースポーツで培った記憶術のおかげで、韓国語は3カ月ほどでマスターしたり、専門書7~8冊をすべて暗記し東京大学大学院に合格できたりと、さまざまな恩恵もありましたね。
――現時点では記憶力に自信がなくても、
トレーニングすれば高められるんですね。
はい。記憶力は才能ではなく、知識であり、スキルです。大事なのは、正しいメソッドで努力し続けること。
もちろん、世の中の全員が同じ能力を平等に持っているわけではありません。運動神経にいい・悪いがあるように、「地頭がいい子」も確かにいるでしょう。しかし、記憶力に関しては努力で埋められる部分が他の領域と比べて大きい。
メモリースポーツで世界トップを目指すレベルだと才能も必要ですが、勉強に活かすために記憶力を高める程度であれば、努力とメソッドだけでも十分に埋められます。